臼田陽子-Yoko Usuda

私の健康観

私は今まで、人生の大半を看護師という肩書のもとで生きてきました。必然的に「健康」を考える場に身を置いてきました。

健康とは、病院と無縁の暮らしができること、と考えがちですが、例え健康診断で病気がみつからなくても、どうも健康そうじゃないということは、多々あります。

健康は身体だけじゃなく、心と密接につながっていることを感じます。色々な指標があるとは思いますが、自分で自分を大切にできていない状態は、決して心が健康とは言えないと思うのです。

森に助けられた子育て時代

自分の今までを振り返ってみても、何回か自分を見失いかけたことがあります。
一番は初めての子育てがスタートした頃でした。結婚と同時に飛騨に来て、身辺に親も友人もいない地での子育て。誰にもわかってもらえないという感覚。とにかく孤独でした。
挫折らしい挫折も、人生経験もないままに母になってしまった私の、初めての挫折だったかもしれません。

そんな時思い出したのは、自分が幼少期に森で遊んだ家族との記憶でした。それはとても心穏やかな情景として心によみがえり、「そうだ。森へ行こう」と、どこかのCMのキャッチコピーのような言葉を口ずさみながら、連れて行ってもらったのは美しい渓流でした。

頭上の枝葉が風に揺れて、樹木が手を振っているようでした。こもれびがきらきらと降り注ぎ、そこは思い出の中の心穏やかな情景と一致した瞬間でした。

森があやしてくれている!お母さんになるって、自分を殺してがんばることじゃないんだな。この木のように穏やかに愛情を注いであげることの方がこの子には数倍必要だ。と気づいたのです。そんなこともあり、我が家の子育ての情景にはいつも森がありました。

木育との出会い

その後縁あって子育て支援に携わるようになり、子育てに悩みを抱えた親御さんに寄り添うという、何よりも自分の経験を活かすことのできる部署に携わらせていただく機会に恵まれました。

かつての自分が抱いたような孤独感を口にする方も多いことに加えて、ネットから流れてくる大量の情報が、逆に自分の頃より育児を困難にしていると感じました。
まずは親同士をつなぐ場として、親子が定期的に木のおもちゃに触れる機会を作ろうと思いたち、その経緯で出会ったのが「ぎふ木育」の概念でした。

木育はよく、木のおもちゃで遊ぶことを推進する。というような、いわゆる木づかい運動のようなものを連想しがちで、当初私もそのような感覚でした。けれどもぎふ木育は、それだけではなくて、自然との共生を考えることのできる”人づくり”を、目指していたのです。

私たち人間も森の循環の一部であること。森が作り出す酸素で息をして、森から流れ出る美しい水で田畑を潤し、そこで収穫した作物を収穫し、森で育まれる生態系の一部をいただきながら生き、文化を育んで暮らしてきた。
現代の暮らしですっかり見えなくなってしまっている森の営み、森と共生することの大切さに、私は木育をとおしてやっと気づいたのです。

すっかり森に対する視点が変わりました。その森が直面している課題に目が向くようになり、私たちの森へのかかわり方、普段の暮らし方の選択が、森の未来も、地球全体の未来も左右するのだと意識するようになりました。

この学びをきっかけに、森との共生を仲間と一緒に考えようと、「市民活動団体komorebi」をたちあげました。「大人の木育」をかかげ、楽しんで森に親しみながら、森の整備にも携わっています。

森林浴で人の健康と地域の森の健康も考えたい!

そんなころ、人の健康と森の健康、どちらも導こうと発信する著書と巡り合います。小野なぎささんの「新しい森林浴」でした。
森林浴で森林空間を活用することによって、参加した人も、もちろん主催者も、そして地域も森も、三方よし、五方よしの活動をしてはじめて自分が実現したいことが受け入れられるのだと説き、その部分に深く共感しました。

とにかく、私が心惹かれる森は市街地ではなく郊外にあるものが多く、その地域は一様に人口減少や過疎化に悩んでいます。私が関わることで地域の人が森の魅力を再認識して関心をもつ人が増え、その森で森林浴をして健康になった人が、森にも地域にもファンになったとすると、結果として地域の健康、ひいては森の健康にもつながる!

私は森林浴ファシリテーターとして、その壮大なビジョンに微力でも携わりたいと思うようになり、「森とひとと木」という屋号で森林浴と自然体験を事業化しました。

森とひとと木 ~森と健康・森も健康~

このネーミングには、森と過ごすひと時で、心も身体も健康になってもらいたい、つまり「森と健康」への想いと、森と人と、木をつなぐことで森も地域も健康にしたい、つまり「森も健康」への願いを込めています。

人と木が寄り添うと、休むという字になりますね。せわしない日常から離れ、一歩立ち止まって休むひと時。森の包容力に身をゆだね、五感を研ぎ澄ませて樹木の声を聴き、小さな生き物たちが教えてくれる命の不思議さ、美しさに心躍らせることはきっと心を満たすでしょう。
森から日常に戻っても、森とどこかつながる気持ちを抱きながら心豊かに暮らす。そんな森林浴を提供することを目指しています。

「そうだ、森へ行こう!Go to forest!」

森林浴には免疫力を向上し、血圧を安定し、副交感神経に作用して精神を安定する効果があることは、医学的なエビデンスに基づいて立証されています。血圧や脈拍を測ればその効果は目に見えるということです。
けれども、「森に行くと心地よい。」という自分の感性を信じること、心と身体で感じることが、なによりの健康への近道だと私は考えます。

決して深い森に分け入らなくても身近に豊かな自然があるこのひだの地で、森へ行こう!
普段閉じてしまいがちな五感を研ぎ澄まし、見て、聞いて、肌で、香りで、そして時には味わって、身体が五感で心地よいと感じることに耳を澄ませる森時間を過ごしましょう♪

森とひとと木代表 / 市民活動団体komorebi主宰
看護師 / 森林浴ファシリテーター(一社・森と未来)/ 森林インストラクター(一社・全国森林レクリエーション協会)/ ぎふ木育指導員(岐阜県)/ ネイチャーゲーム指導員(公社・日本シェアリングネイチャー協会)/ 飛騨市薬草コンシェルジュ(NPO法人・薬草で飛騨を元気にする会)/ おもちゃコンサルタント・木育インストラクター(NPO法人・芸術と遊び創造協会)/グリーンツーリズムインストラクター(都市農山漁村交流活性化機構)

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